活動期間1966.8-1977/1980/1984
Caravan、National Healthなどとともにカンタベリー・シーンの中軸を担った重要グループ。メンバー変遷に伴いアンダーグラウンド/サイケデリック~シリアスなジャズ・フュージョンなど、その時々で音楽性を大きく変化させた。
1960年代半ば、ロンドンでオーストラリア出身の放浪者Daevid Allenとまだ学生だったRobert Wyattと彼の友人らが出会ったことがグループ結成の発端。Allenは渡英前にフランス・パリでビート文学の巨匠William S. Burroughsと親交を持ち、Wyattらより10歳ほど年上だったこともあり、彼らに大きな影響を与える。
66年夏、イギリスに戻ったAllenは、カンタベリー・シーンの源流となったセミプロ・バンドWilde Flowersで活動していたWyattやKevin Ayers、Mike Ratledgeらと新グループを結成。まもなくBurroughsの小説から名前を取り、Soft Machineと名乗るようになる。
ロンドンのUFOクラブを拠点に活動を開始、サイケデリックな演奏が評判を呼ぶようになる。しかし、67年秋にフランス公演から帰途の折、麻薬所持などでAllenが入国許可が下りずにそのまま脱退を余儀なくされる。
残った3人は活動を継続し、Jimi Hendrix Experienceとの米国ツアー中にデビュー・アルバム「The Soft Machine」を制作。同アルバムは一定の評価を得るも、ツアーの連続に疲弊した3人はグループの解散を決意、Ayersはスペインへ逃避行してしまう。
レーベル側からセカンド・アルバムの制作要請を受けてRatledgeとWyattは元バンド仲間でバンドのロードマネージャーだったHugh Hopperをベースに加えてセカンド「Volume 2」を制作。従来からジャズ志向をみせていたRatledgeとHopperの加入で、ジャズ/フュージョンに急接近する。
69年秋にはElton DeanらThe Keith Tippett Group出身の管楽器奏者を加えて編成を拡大。70年には2枚組で収録曲4曲の大作「Third」をリリース。 続く71年には傑作「Fourth」を発表する。しかし、シリアスなジャズに音楽性が向かう中で、Wyattが脱退。
72年には「Fifth」を制作するが、これを最後にフリージャズを志向するDeanと音の精密なアンサンブルにこだわるRatledge、Hopperとの間に方向性のずれが生じてDeanが脱退。72年半ばにはNucleus出身の名ドラマーJohn Marshallが加入。翌73年には同じくNucleusのKarl Jenkins、Roy Babbington、Allan Holdsworthが相次いで加入、これを契機にバンド内の力関係に変化が生じ、Jenkinsが主導権を握り、フュージョン志向を強める結果に。
これにより、76年初頭には唯一のオリジナル・メンバーだったRatledgeがグループを去ることになった。76年には後期の名作「Softs」をリリース。しかし、77年のツアーを最後に活動を停止した。
メンバーはそれぞれ新たな活動に入ったが、80年にはJenkinsとMarshallの2人がHoldsworth、Jack Bruceらをゲストに迎え、プロジェクト編成でアルバム「Land Of Cockayne」を制作。84年には後期メンバーを中心にロニー・スコッツ・クラブで再編ギグを行ったが、これが最後の活動となった。
2003年になって、Daen、Hopper、Marshall、Holdsworthの4人がSoft Worksを結成。脱退したHoldsworthに代わって後期ギタリストだったJohn Etheridgeを加えたことでグループ名をSoft Machine Legacyに改め活動した。
<albums>
The Soft Machine (Probe PLP4500) 1968/12 ※US
Volume 2 (Probe SPB1002) 1969/4 ※US
Third (CBS 66246) 1970/6
Fourth (CBS 64280) 1971/2
Fifth (CBS 64806) 1972/6
Six (CBS 68214) 1973/2
Seven (CBS 65799) 1973/10
Bundles (Harvest SHSP4044) 1975/3
Softs (Harvest SHSP4056) 1976/6
Alive & Well-Recorded In Paris (Harvest SHSP4083) 1978
Land Of Cockayne (EMI EMC3348) 1981
・主な編集盤
Triple Echo (Harvest SHTW800) 1977 ※3枚組
・未発表/ライブ音源など
Live At The Proms 1970 (Reckless RECK5) 1988 ※70年8月
The Peel Sessions (Strange Fruit SFRCD201) 1990 ※69~71年BBC
BBC Radio 1 Live In Concert (Windsong WINCD031) 1993 ※71年3月
BBC Radio 1 Live In Concert (Windsong WINCD056) 1994 ※72年7月
Live In France (One Way OW31445) 1995 ※72年5月パリ
Live At The Paradiso 1969 (Voiceprint VP193) 1995 ※69年3月オランダ
Virtually (Cuneiform RUNE100) 1997 ※71年3月西ドイツ・ブレーメン
Live ’70 (Blueprint BP290) 1998 ※70年2&8月
Facelift (Voiceprint VP233) 2002 ※70年4月クロイドン
BBC Radio 1967-1971 (Hux HUX037) 2003 ※67~71年BBCライブ
BBC Radio 1971-1974 (Hux HUX047) 2003 ※71~74年BBCライブ
Somewhere In Soho (Voiceprint VP262CD) 2004 ※70年ロンドン
Breda Reactor (Voiceprint VP345CD) 2004 ※70年オランダ
British Tour ’75 (Major League MLP10CD) 2005 ※75年ノッティンガム
Grides (Cuneiform RUNE230/231) 2006 ※70年10月オランダ/71年3月西ドイツDVD
Middle Earth Masters (Cuneiform RUNE235) 2006 ※67年9月ロンドン
Floating World Live (Moon June MJR007) 2006 ※75年1月西ドイツ
Drop (Moon June MJR023) 2008 ※71年10月のライブ
Live At Henie Onstad Art Centre 1971 (Reel Recording RR014/15) 2009
NDR Jazz Workshop (Cuneiform RUNE305/306) 2010 ※73年西ドイツ
Switzerland 1974 (Cuneiform RUNE395/396) 2015/2
・デモ&未発表音源
Faces & Places Vol.7 (BYG 529.907) 1972 ※67年4月デモ
Rubber Riff (Voiceprint VP190) 1994 ※76年4月未発表作
Spaced (Cuneiform RUNE90) 1996 ※69年秋録音
Noisette (Cuneiform RUNE130) 2000 ※70年1月録音
Soft Machine Turns On Volume 1 (Voiceprint VP231CD) 2001
Soft Machine Turns On Volume 2 (Voiceprint VP234CD) 2001
Backwards (Cuneiform RUNE170) 2002 ※69年11月/70年5月の録音
Vol.9-Anatomy On A Facelift/Hugh Hopper (Gonzo Multimedia HST260CD) 2015
・その他
Canterburied Sounds Vol.2/V.A. (Voiceprint VP202) 1998 ※未発表録音2曲
Live At The Roundhouse 1971 (Gonzo Multimedia HST115CD) 2012 ※Daevid Allen & Gilli Smyth With The Soft Machine Family
<singles>
Love Makes Sweet Music/Feelin’ Reelin’ Squealin’ (Polydor BM56151) 1967/2
Soft Space Part1/Part2 (Harvest HAR5155) 1978/4
【参加メンバー】
Daevid Allen:guitar (1966.8-1967.9)
Kevin Ayers:bass/vocals (1966.8-1968.12)
Mike Ratledge:keyboards (1966.8-1976.1)
Robert Wyatt:drums/vocals (1966.8-1971.9)
Andy Summers:guitar (1968.5-7) ※ギグ・サポート
Hugh Hopper:bass (1969.2-1973.5)
Elton Dean:sax (1969.10-1972.5)
Lyn Dobson:sax/flute (1969.10-1970.2)
Mark Charig:cornet (1969.10-12)
Nick Evans:trombone (1969.10-12)
Phil Howard:drums (1971.9-1972.1)
John Marshall:drums (1972.2-1977.summer/1980/1984)
Karl Jenkins:oboe/sax/keyboards (1972.7-1977.summer/1980/1984)
Roy Babbington:bass (1973.5-1976.7)
Allan Holdsworth:guitar (1973.11-1975.3)
John Etheridge:guitar (1975.4-1977.summer/1984)
Alan Wakeman:sax (1976.2-7)
Ric Sanders:violin (1976.9-1977.summer)
Percy Jones:bass (1976.9-1977.2)
Steve Cook:bass (1977.2-summer/1984)
Dave MacRae:keyboards (1984)
【メンバー変遷】
#1 (1966.8-1967.9)
Daevid Allen:g
Kevin Ayers:b/vo
Mike Ratledge:key
Robert Wyatt:ds/vo
※Larry Nolan:g
結成当初はギタリストのLarry Nolanを加えた5人編成だったが、数回のギグでNolanが早くも離脱し4人での活動に。UFOクラブを根城とし、サイケデリックな音楽性が時代背景も手伝ってアンダーグラウンド・シーンで評判を呼ぶようになる。67年2月にはデビュー・シングルを発表。しかし、同年9月、フランス公演の帰途の際、Allenが麻薬所持により入国拒否を受けてフランスに逆戻りする形で脱退。Allenは後のパートナーGilli Smythらとバンド活動を始め、1969年にはGongを結成。
#2 (1967.10-1968.7)
Kevin Ayers:b/vo
Mike Ratledge:key
Robert Wyatt:ds/vo
※Andy Summers:g
ギターレスの3人で活動を継続。68年に入ってJimi Hendrix Experienceとの半年にも及ぶ長期の米国ツアーに出発。春にはニューヨークでデビュー・アルバムを制作。68年5~7月のギグでは元Dantalian’s ChariotのAndy Summersがサポート・ギタリストとして参加した。
#3 (1968.7-12)
Kevin Ayers:b/vo
Mike Ratledge:key
Robert Wyatt:ds/vo
再び3人で活動するが、長期のツアーにメンバーはすっかり疲弊。グループは解散状態となった。Ayersはベースをはじめ家財道具一式を売り払い、スペインのイビザ島に逃避行し、そのままグループを離脱した。69年半ばにロンドンに戻り、ソロ・アーティストとして再出発する。
#4 (1969.2-10)
Mike Ratledge:key
Robert Wyatt:ds/vo
Hugh Hopper:b
解散状態だったグループにレコード会社からセカンド・アルバムの制作要請が舞い込む。WyattとRatledgeは、当時ロード・マネージャーだったHugh Hopperを正式メンバーに迎えてセカンド・アルバムを制作する。Hopperはバイクを買うためにベースを売り払う寸前だったという。当初からジャズ志向の強かったRatledgeに加えて、Hopperの加入が契機となり急速にシリアスなジャズへと音楽性をシフトさせていく。
#5 (1969.10-12)
Mike Ratledge:key
Robert Wyatt:ds/vo
Hugh Hopper:b
Elton Dean:sax
Lyn Dobson:sax/fl
Mark Charig:cornet
Nick Evans:tb
Ratledge、Wyatt、Hopperの3人は独自のジャズ・ロックの具現化のために、精鋭の管楽器奏者を迎える。Keith Tippett GroupのElton Dean、Mark Charig、Nick Evansの3人と、Pete Brown & His Battered OrnamentsやManfred Mannにも在籍したLyn Dobsonをスカウト。一気に7人編成の大所帯となる。しかし、 経済的な理由からDeanとDobsonのみバンドにとどまることに。さらにグループはジャズに傾倒。CharigとEvansはKeith TippettとともにKing Crimsonのアルバム参加でロック・ファンにも知られる存在となった。
#6 (1969.12-1970.2)
Mike Ratledge:key
Robert Wyatt:ds/vo
Hugh Hopper:b
Elton Dean:sax
Lyn Dobson:sax/fl
上記5人にEvansとヴァイオリン奏者のRab Spall、カンタベリー・シーンの名フルート奏者Jimmy Hastingsをゲストにサード・アルバム「Third」を制作。録音後にDobsonが離脱。この頃からDeanは自身のパート・タイム・バンドElton Dean Groupを率いて活動。
#7 (1970.2-1971.9)
Mike Ratledge:key
Robert Wyatt:ds
Hugh Hopper:b
Elton Dean:sax
4人編成となって4枚目のアルバム「Fourth」を制作。どんどんシリアスなジャズに向かっていく中で、ヴォーカリストとしての側面も持っていたWyattが脱退。自身のグループMatching Moleを結成する。
#8 (1971.9-1972.1)
Mike Ratledge:key
Hugh Hopper:b
Elton Dean:sax
Phil Howard:ds
Wyattの後任にElton Dean GroupのPhil Howardを加えてアルバム「5」の録音を開始。Howardはアルバム片面分の録音のみに参加。
#9 (1972.2-5)
Mike Ratledge:key
Hugh Hopper:b
Elton Dean:sax
John Marshall:ds
Howardに代わってNucleusを経たジャズ系名ドラマーJohn Marshallを獲得。アルバム「5」を完成させる。同作には同じくNucleusで後に正式メンバーとなるベースのRoy Babbingtonがゲスト参加した。Deanは72年に自身のグループを発展させJust Usを組み活動。この頃になると、フリー・ジャズを志向するDeanとアンサンブルを大切にするRatledge、Hopperの志向のずれが大きくなり、Deanが脱退。
#10 (1972.7-1973.5)
Mike Ratledge:key
Hugh Hopper:b
John Marshall:ds
Karl Jenkins:ob/sax/key
Deanに代わってMarshallと同じNucleus出身のKarl Jenkinsが加入。スタジオ作とライブ作からなる2枚組「Six」を制作する。Jenkinsの加入でミニマム系のジャズ・ロックに音楽性が変化。これに反発したHopperが脱退する。
#11 (1973.5-11)
Mike Ratledge:key
John Marshall:ds
Karl Jenkins:ob/sax/key
Roy Babbington:b
Hopperに代わってアルバム「5」にゲスト参加した経緯があったRoy Babbingtonが加入。Ratledgeを除くメンバー全員がNucleus出身者で占められる形となった。73年、2枚目のアルバムとなった「Seven」を制作。
#12 (1973.11-1975.3)
Mike Ratledge:key
John Marshall:ds
Karl Jenkins:ob/sax/key
Roy Babbington:b
Allan Holdsworth:g
さらにNucleus人脈からの補強が続き、創設メンバーAllen以来となるギタリストAllan Holdsworthが加入。アルバム「Bundles」を制作。Holdsworthは本作のみで離脱し、渡米後New Tony Williams’ Lifetimeに加入。
#13 (1975.4-1976.1)
Mike Ratledge:key
John Marshall:ds
Karl Jenkins:ob/sax/key
Roy Babbington:b
John Etheridge:g
Holdsworthの後任には元Darryl Way’s WolfのJohn Etheridgeが加入。ギターというリード奏者の加入やJenkinsによるシンセサイザー導入、さらにフュージョン色を濃くする中でRatledgeが居場所をなくし、自らグループを去る。これによりオリジナル・メンバーがいなくなった。後にRatledgeはJenkinsと再び組んでRollercoasterやAdiemusで活動。
#14 (1976.2-7)
John Marshall:ds
Karl Jenkins:key
Roy Babbington:b
John Etheridge:g
Alan Wakeman:sax
Graham Collier Musicやセッション活動でも活躍してきたサックス奏者Alan Wakemanが加入。後期の名作「Softs」を制作。Jenkinsはキーボード専任となる。リリース後にBabbingtonとWakemanが脱退。
#15 (1976.9-1977.summer)
John Marshall:ds
Karl Jenkins:okey
John Etheridge:g
Ric Sanders:vln
Steve Cook:b
※Percy Jones:b
新たなリード奏者に元Surrounding SilenceのヴァイオリンRic Sandersを迎える。Babbingtonの後任にはBrand XのPercy Jonesがツアーをサポート。77年2月には正式にSteve Cookが加入。同メンバーでの録音がライブ・アルバム「Alive & Well-Recorded In Paris」 (78年)として後にリリースされるが、77年夏に活動を停止。EtheridgeとSandersは79年、2nd Visionを結成。
#16 (1980)
John Marshall:ds
Karl Jenkins:ob/sax/key
※Allan Holdsworth:g
※Alan Parker:g
※Jack Bruce:b
※Ray Warleigh:sax/fl
※Dick Morrisey:sax
※John Taylor:p
80年、MarshallとJenkinsの2人によるプロジェクトとしてラスト・アルバム「Land Of Cockayne」を制作。Holdsworthをはじめ、多彩なゲストを招いて制作されている。アルバム制作のみで継続した活動には至らず。
#17 (1984)
John Marshall:ds
Karl Jenkins:ob/sax/key
John Etheridge:g
Steve Cook:b
Dave MacRae:key
84年に突如として再編。Sandersを除く活動停止した77年のメンバーにキーボード奏者のDave MacRaeを加えた5人でロニー・スコッツ・クラブにて1週間ギグを行った。