The Crazy World Of Arthur Brown

Crazy World 活動期間1966.11-1970.6
 奇才Arthur Brown率いる60s英サイケデリック・ロック・グループの代表格。ハモンドオルガンのVincent Craneや若き日のドラマーCarl Palmerら名手を擁して「Fire」を英米で大ヒットさせた。

 1966年秋、自身のグループThe Arthur Brown Setを解散させたBrownが新バンドの結成を画策。ジャズ・コンボを率いて活動していたCraneと出合い、ドラマーのDrachen Theakerを加えて結成。Soft Machine、Pink Floyd、TomorrowらとともにUFOクラブを中心に演奏活動を展開、アンダーグラウンド・シーンから人気を呼ぶ。

crazy world of Trackとの契約を獲得。デビュー・シングルのリアクションは薄かったが、初の米国ツアー最中の1968年半ばにリリースされたセカンド・シングル「Fire」が本国チャートで首位を獲得する大ヒット。火の付いたロウソクを頭の上に乗せて歌うBrownのエキセントリックなヴォーカル・スタイルが評判となった。同年秋のアルバムと計3枚のシングルはレーベル・メイトだったThe WhoPete Townshendがアソシエイト・プロデューサーを務めている(プロデュースはThe WhoのマネージャーでTrackを設立したKit Lambert)。

 人気絶頂期と重なった初の全米ツアーは、Theaker、Craneが相次いで体調不良などで離脱する不運に見舞われるが、PalmerやキーボードのPete Solleyらをスカウトして体制を立て直す。秋にはCraneが復帰してサード・シングル「Nightmare」を発表。

 1969年に入ってCrane、PalmerがAtomic Roosterの結成に動きバンドは分裂。米国ツアーは急遽現地のミュージシャンが代替されるなど活動に暗雲が立ち込める。帰国後にメンバーを一新してセカンド・アルバムの録音するが、当時のリリースは見送られた。1970年半ばにグループはPuddletown Expressに発展するが、Brownはよりプログレッシヴな方向性へとシフトした新グループKingdom Comeを結成した。

 Brownは1970年代後半以降ソロを中心に活動していたが、1997年に同グループ名義の新録音シングルを発表。2000年代に入り新メンバーでグループを本格的に再始動させた。


<albums>
The Crazy World Of Arthur Brown (Track 2407 012) 1968/9
Strangelands (Reckless RECK2) 1998 ※69年録音
Tantric Lover (Voiceprint VP265CD) 2003 ※2002年500枚限定販売のリイシュー
Vampire SuiteT (Track TRA1035CD) 2003

<singles>
Devil’s Grip/Give Him A Flower (Track 604 008) 1967/9
Fire/Rest Cure (Track 604 022) 1968/6
Nightmare/What’s Happening (Track 604 026) 1968/11
Vampire Love/Vampire Love(transfusion mix)/A Hard Rain’s Gonna Fall (Phun City no number) 1997 ※新録音


【メンバー変遷】
#1 (1966.11-1967.8)
Arthur Brown:vo
Vincent Crane:key
Drachen Theaker:ds
※Pete Gifford:sax 
 Craneがベース・パートをオルガンでカバーし、ヴォーカル、キーボード、ドラムスという変則トリオ編成でスタート。Craneの旧友でサックス奏者のPete Giffordが1967年2月に加わるが、ギグ数回に参加しただけで離脱している。デビュー・シングルの録音にはBrownの元バンド仲間のギタリストPaul BrettとドラムにJon Hisemanが参加している。

#2 (1967.8-1968.5)
Arthur Brown:vo
Vincent Crane:key
Drachen Theaker:ds
Nicholas Greenwood:b (aka Sean Nicholas)
 ツアーを前にオーディションでNicholas Greenwoodを採用。このメンバーでファースト・アルバムを録音。レコーディングでは数曲でセッション・ドラマーが起用されているらしい。この頃にはよく聞く話だが、制作サイドはどうもTheakerの技量を信用していなかった様子。

#3(1968.5-6)
Arthur Brown:vo
Vincent Crane:key
Nicholas Greenwood:b
Jeff Cutler:ds
 初の米国ツアーを敢行するが、ツアー間もない5月にTheakerが飛行機での移動を拒んで離脱。現地でカナダ人ドラマーのJeff Cutlerを急遽雇用する。Theakerは米国にとどまり、サイケ・グループのLoveなどに加わってセッション活動を行った。1969年半ばに帰国し11月に再び合流。ツアー中にリリースされたセカンド・シングルが英米で大ヒット。

#4(1968.6-7)
Arthur Brown:vo
Nicholas Greenwood:b
Jeff Cutler:ds
Dick Henningham:key
 ツアー後半に入って今度はVincent Craneが長期ツアーに疲弊して神経衰弱に陥り離脱を余儀なくされる。Dick Henninghamを加えてツアーを終了させる。Craneは11月に復帰。HenninghamとGreenwoodは1971年にKhanを結成する。

#5 (1968.8-11)
Arthur Brown:vo
Nicholas Greenwood:b
Pete Solley:key
Carl Palmer:ds
 Chris Farlowe & The ThunderbirdsのPete SolleyとCarl Palmerという強力なメンバー補強に成功。11月にはCraneの体調が戻り復帰。SolleyはTerry Reid Bandへ。

#6 (1968.11-1969.6)
Arthur Brown:vo
Vincent Crane:key
Nicholas Greenwood:b
Carl Palmer:ds
 Craneが復帰するものの、1969年6月にはPalmerを引き連れて独立してしまう。米国ツアーの最中だったこともあって地元のミュージシャンを雇って継続。

#7 (1969.6-10)
Arthur Brown:vo
Nicholas Greenwood:b
others
 急造バンドで何とか凌いだようだが、演奏は散々な内容だった模様。ベースのGreenwoodもこれに付き合ったのか、彼がいつバンドを離れたのかよく分からない。

#7 (1969.11-1970.6)
Arthur Brown:vo
Drachen Theaker:ds
George Khan:sax
Jonah Mitchell:synth/key
Andy Rickell:g(Android Funnel)
Dennis Taylor:b
 Brownは米国ツアーから帰国しバンドを再建。ドラマーのTheakerを復帰させ、Pete Brown & His Battered Ornamentsのサックス奏者George Khan、元White RabbitのAndy Rickell、さらにローディーだったDennis Taylorをベースに加え一気に6人編成に拡大。このメンバーで当時は未発表に終わったセカンド・アルバム「Strangelands」を録音。
 
 ドーセット州のPuddletownという場所の農場でリハーサルなどを行ったことから Puddletown Expressと名乗り始めギグを展開する。1970年6月、Giorgio Gomelskyのマネージメントでフランス・ツアーを行うが、これがうまくいかずにBrownをはじめ、Theaker、Rickellが離脱を決意。Gomelskyからセカンド・アルバムを彼のレーベルMarmaladeからリリースする提案を受けるも、Brownはバンド存続の意欲がなく、これを固辞したようだ。この時期の未発表音源3曲が後にKingdom Comeの編集盤に収録された。

 残ったKhan、Micthell、Dennisの3人はキーボード奏者のRoy Sharlandを加えて活動継続を試みるも、ほどなく解散した。Brownは再びTaylorと合流しKingdom Comeを結成。TheakerとRickellはRustic HingeHigh Tideで活動。