The Pretty Things

Pretty Things 活動期間1962.12-1976.6/1980-
 The Beatles、The Rolling Stonesとともに1960年代前半のR&Bグループとしてシーンに登場、サイケデリック・ロックに転じた1968年には傑作トータル・コンセプト・アルバム「S.F. Sorrow」をリリースするなど、オリジナリティ溢れる活動を展開した。ただ、活動期間中はなかなかセールスに結びつかずに長く不遇の時代を過ごした。後年になって大きく再評価が進み、1980年の再結成以降はグループの中心人物Phil MayDick Taylorを核として活動を継続した。

 ロンドンのアート・スクールに在学していたヴォーカリストPhil MayとギタリストDick Taylorを中心に1962年12月に結成。MayとTaylorはThe Rolling Stonesを結成するMick JaggerKeith Richardsと友人で、TaylorはJagger、RichardsらとLittle Boy Blue & The Blue Boysというブルース・バンドで活動していた。

 1962年春にはBrian Jonesが加わりThe Rolling Stonesの母体が出来上がるが、Taylorはこの過程でベースを担当することになる。1962年末にはプロ・デビューが決まるが、Taylorはこの時まだ在学中で本来の持ち楽器だったギターへの未練もあり脱退を決意しMayと合流することに。当初はJerome & The Pretty Thingsと名乗り、100クラブへのレギュラー出演やハンブルグ遠征などで腕を磨く。

 1963年12月、「第2のThe Rolling Stones」を探していたFontanaのA&Rマンの目にとまり、レコーディング契約を締結。これを機に正式メンバーとして元Carter Lewis & The SouthernersのドラマーViv Princeが加わり、オリジナル・ラインナップが揃う。同年6月シングル「Rosalyn」でデビュー。セカンド・シングルの「Don’t Bring Me Down」はチャートの10位、サード・シングル「Honey I Need」は同13位のヒットを記録、65年3月にはセルフ・タイトルのアルバムを発表、ツアーやテレビ出演などを通して人気グループとなる。しかし、これ以降はヒットからは縁遠くなってしまう。

 1965年秋には奇行により活動に支障を来たし始めたPrinceを解雇し、Prince不在時にギグをサポートした経験のあったSkip Alanが正式メンバーとなる。ただ、1966~1967年頃には相次ぐメンバーの離脱でライブ活動が困難となったことから、3枚目のアルバム「Emotions」のレコーディングに入り、セッションに参加したThe FenmenJohn PoveyとWally AllenことWally Wallerが正式メンバーに迎えられている。

 1967年にはFontanaの契約切れに伴いColumbiaに移籍。サイケデリックな音楽性に方向転換を図る。68年春には新ドラマーに元Tomorrowで以前代役ドラマーを務めたこともあったTwinkを加えて同年末にはアルバム「S.F. Sorrow」を発表する。初のロック・オペラとなった本作は、アルバムを1つのストーリーでまとめた本格的なトータル・コンセプト作の先駆けとなった傑作で、翌年リリースされたThe Whoの大作「Tommy」にも大きな影響を与えたが、当時のセールスは振るわず、米国では「Tommy」の後にようやくリリースされるなど不運が重なり、満足な成果を挙げることができなかった。この頃にはElectric Bananaの変名でテレビやCM用のBGMなどライブラリー音源を制作する”内職”も経験。

 1969年11月のTwink脱退後はAlanが復帰を果すが、Mayとともにグループの中核を担ってきたTaylorがプロデューサー転身のためにグループを脱退してしまう。70年にはHarvestに移籍し、アルバム「Parachute」をリリース。プログレッシヴ・ロックにも通じる本作はローリング・ストーン誌において同年のベスト・アルバムに選出される傑作に仕上がったが、チャートの43位にランクされるにとどまった。1971年半ばにはついに活動休止に追い込まれる。

Pretty Things2 同年11月にMayは活動を再開。元Leaf HoundのベーシストStuart Brooksを新メンバーに、Warner Bros.からアルバム「Freeway Madness」(1972年)を発表。70年代中期はLed Zeppelinが設立した新レーベルSwan Songに招かれ、2枚のアルバム「Silk Torpedo」「Savage Eye」をリリース、アメリカでもライブ活動を展開した。

 しかし、1976年半ばにリーダーのMayがグループ脱退を表明。Poveyを除く最終ラインナップの4人はグループ名をMetropolisに改め活動を継続するも、77年末に解散を余儀なくされた。

 Mayは77~78年にかけてThe Fallen Angelsを率いて活動。同年には67~68年のラインナップで1日のみの再結成ライブが人気の高かったオランダで実現(ライブ作としてリリース)している。続く1980年にはこのラインナップにTolsonを加えた6人で再結成し、アルバム「Cross Talk」をDave Gilmourの尽力で発表した。

 この後、地道ながらMayとTaylorを中心に活動を継続させた。1998年には傑作アルバム「S.F. Sorrow」をスタジオ・ライブで再現した「Resurrection」をリリースしたほか、DVD化も実現している。

<albums>
The Pretty Things (Fontana TL5239) 1965/3
Get The Picture (Fontana TL5280) 1965/12
Emotions (Fontana TL5425) 1967/5
S.F. Sorrow (Columbia SCX6306) 1968/12
Parachute (Harvest SHVL774) 1970/6
Freeway Madness (Warner Bros. K46190) 1972/12
Silk Torpedo (Swan Song SSK59400) 1974/10
Savage Eye (Swan Song SSK59401) 1976/1
Cross Talk (Warner Bros. K56842) 1980/8
Live At Heartbreak Hotel (Big Beat WIK24) 1984
Out Of The Island (In-Akustik 8708) 1988
Resurrection (Snapper Music 160042) 1998
Rage Before Beauty (Snapper Music SMACD814) 1999 ※80年代以降の録音と新録音曲
Balboa Island (Cote Basque CBCD07001) 2007/9

・その他編集盤、ライブ作品など
Live ’78 (Jade 6812728) 1978 ※Holland only/78年の1日だけの再編ギグ
Singles A’s & B’s (Harvest SHSM2022) 1977/7
Before The Fall The Peel Sessions (Strange Fruit SFRCD203) 1991
The BBC Sessions (Repertoire REP4938) 2003 ※65~75年のBBC音源
40th Anniversary-Live In Brighton (Snapper Music SDVD520) 2006 ※DVD/CD

・with Matthew Fisher
A Whiter Shade Of Dirty Water (Kingdom CDKVL9031) 1994 
 ※当初マイナーレーベルから93年に発表

・Electric Banana名義
Electric Banana (De Wolf 3040) 1967 ※with Tilsley Orchestral
More Electric Banana (De Wolf 3069) 1968
Even More Electric Banana (De Wolf 3123) 1969
Hot Licks (De Wolf 3284) 1973
The Return Of The Electric Banana (De Wolf 3381) 1979
Electric Banana The 70s (Butt NOTT001) 1979 ※再編集盤
Electric Banana The 60s (Butt NOTT003) 1980 ※再編集盤

・Pretty Things/Yardbirds Blues Band名義
The Chicago Blues Tapes 1991 (Demon FIENDCD708) 1991
Wine, Woman & Whiskey – More Chicago Blues & Rock Sessions (Demon FIENDCD748) 1994

<EP>
The Pretty Things (Fontana TE17434) 1964/12
Rainin’ In My Heart (Fontana TE17442) 1965/11
On Film (Fontana TE17472) 1966/8

<singles>
Rosalyn/Big Boss Man (Fontana TF469) 1964/6
Don’t Bring Me Down/We’ll Be Together (Fontana TF503) 1964/10
Honey I Need/I Can Never Say (Fontana TF531) 1965/3
Get A Buzz/Cry To Me (Fontana TF585) 1965/7
Midnight To Six Man/Can’t Stand The Pain (Fontana TF647) 1965/12
Come See Me/£.S.D. (Fontana TF688) 1966/4
A House In The Country/Me Needing You (Fontana TF722) 1966/7
Progress/Buzz The Jerk (Fontana TF773) 1966/12
Children/My Time (Fontana TF829) 1967/4
Defecting Grey/Mr. Evasion (Columbia DB8300) 1967/11
Talking About The Good Times/Walking Through My Dreams (Columbia DB8353) 1968/2
Private Sorrow/Balloon Burning (Columbia DB8694) 1968/11
The Good Mr. Square/Blue Serge Blues (Harvest HAR5016) 1970/4
October 26/Cold Stone (Harvest HAR5031) 1970/11
Stone Hearted Mama/Summertime/Circus Mind (Harvest HAR5037) 1971/5
Over The Moon/Havana Bound (Warner Bros. K16255) 1973/1
Is It Only Love/Joey (Swan Song SSK19401) 1974/11
I’m Keeping…/Atlanta (Swan Song SSK19403) 1975/5
Joey/Bridge Of God (Swan Song SSK19401) 1975/7
Sad Eye/Remember The Boy (Swan Song SSK19405) 1976/1
Tonight/It Isn’t Rock ‘n’ Roll (Swan Song SSK19406) 1976/5
I’m Calling/Sea Of Blue (Warner Bros. K17670) 1980/8
Fallen Again/She Don’t T (Warner Bros. K17670) 1980/11
Eve Of Destruction/Goin’ Downhill (Trax Music 7-TX-12) 1989
Get Yourself Home/We’ll Be Together (Dog Meat DOG038) 1992 
 ※Australia/John Staxが発掘したサード・シングル用未発表音源

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【歴代メンバー】
Phil May : vocals (1962.12-1971.6/1971.11-1976.6/1980-)
Dick Taylor : guitars/vocals (1962.12-1969.11/1980-)
Brian Pendleton : guitars (1963.summer-1967.1)
John Stax : bass (1963-1967.1)
Peter Kitley : drums (1963)
Viv Andrews : drums (1963)
Viv Prince : drums (1963.12-1965.11)
Skip Alan : drums/vocals  (1965.11-1968.3/1969.11-1971.6/1971.11-1976.6/1980-1981)
John Povey : keyboards/vocals  (1967.1-1971.6/1971.11-1976.6/1980-1981)
Wally Allen (Wally Waller) : bass/guitars/vocals    (1967.1-1971.6/1980-1981)
Twink (John Alder) : drums/vocals (1968.3-1969.11)
Victor Unitt : guitars/vocals (1969.11-1970.6)
Peter Tolson : guitars/vocals (1970.6-1971.6/1971.11-1976.6/1980-1981)
Stuart Brooks : bass/vocals (1971.11-1973)
Gordon Edwards : bass/keyboards/vocals (1973-1976.6)
Jack Green : bass/vocals (1973.summer/1974.12-1976.6)

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【メンバー変遷】
#1 (1962.12-1963.12)
Phil May:vo
Dick Taylor:g
Brian Pendleton:g
John Stax:b
※Peter Kitley:ds
※Viv Andrews:ds
 本格デビュー目前だったThe Rolling Stonesのベーシストの座を捨ててまでブルース・ギターにこだわったTaylorと友人Mayを中心に結成。1963年の秋頃までにベースにはMayの幼馴染のJohn Stax、リズム・ギターにはTaylorやMick Jaggerと同じダートフォード・グラマー・スクール出身のBrian Pendletonが加わり、バンドの母体が出来上がった。ドラマーは当初流動的だったようでPeter Kitley、さらにViv Andrewsらが務めた。

#2 (1963.12-1965.11)
Phil May:vo
Dick Taylor:g
Brian Pendleton:g
John Stax:b
Viv Prince:ds 
※Skip Alan:ds
※John Alder/Twink:ds
※Mitch Mitchell:ds
 メジャー・デビューが決定し、ドラマーには正式に元Carter-Lewis & The SouthernersのViv Prineが加入。1964年1stシングル「Rosalyn」をリリース。デビュー後まもなくはシングル・セールスも良く、人気バンドに。しかし、1965年にはPrinceの奇行が目立ち始め、ギグに姿を現さないことや演奏不能となることが多くなる。このため、Skip Alan TrioのSkip AlanやThe FairiesのJohn Alder(Twink)、名手Mitch Mitchellらがサポートした。セカンド・アルバム「Get The Picture」ではプロデューサーのBobby Grahamやセッション・ドラマーが多くの曲をヘルプした。Princeはこの後、ソロ名義のシングルをリリースしたほか、The Bunch Of Fivesなどでプレイ。

#3 (1965.11-1967.1)
Phil May:vo
Dick Taylor:g
Brian Pendleton:g
John Stax:b
Skip Alan:ds
 Viv Prince不在時に代役を務めていたSkip Alanが正式ドラマーに。しかし、1966年末にはリズム・ギターのPendletonが神経衰弱のためにリタイア。さらにベースのStaxもグループを離れ、その後オーストラリアへ移住するなどメンバーの離脱が相次ぐ。

#4 (1967.1-1968.3)
Phil May:vo
Dick Taylor:g/vo
Skip Alan:ds/vo → #6
John Povey:key/vo
Wally Allen:b/g/vo
 メンバー離脱が相次いだことでギグが難しくなった本格的にサード・アルバム「Emotions」の制作に移り、元The FenmenのJohn PoveyとWally Allenを招く。2人はそのまま正式メンバーとなる。1968年、欧州ツアーで知り合ったフランス人女性との結婚を機にAlanが離脱。

#5 (1968.3-1969.11)
Phil May:vo
Dick Taylor:g/vo 
John Povey:key/vo
Wally Allen (Wally Waller) :b/g/vo
Twink:ds/vo
 Alanの後任に元Tomorrowで過去に代役でステージに立った経験のあったTwinkが加入。傑作アルバム「S.F. Sorrow」を制作するが、英米ともにセールスは不発。1969年秋にはTaylorがプロデューサーへの転身を決めて離脱、Twinkもバンドを離れた。

#6 (1969.11-1970.6)
Phil May:vo
John Povey:key/vo
Wally Allen/Wally Waller:b/vo
Skip Alan:ds/vo
Victor Unitt:g/vo 
 レーベルをHarvestに移して、コンセプト作第2弾アルバム「Parachute」をリリースする。ドラマーにAlanを復帰させ、Taylorの後任にはレーベル・メイトとなったEdger Broughton BandのギタリストVictor Unittを加える。Unittは本作限りで離脱し、その後Edger Broughton Bandに復帰した。

#7 (1970.6-1971.6)
Phil May:vo
John Povey:key/vo
Wally Allen/Wally Waller:b/vo
Skip Alan:ds/vo
Peter Tolson:g/vo
 Unittの後任に元Eire ApparentのPeter Tolsonが加入。しかし、依然としてセールスは伸び悩みを続け、1971年半ばについに活動を停止する。Wallerはプロデューサー業に、AlanはGordon Edwards、Jack GreenらのバンドSunshineに加入。

#8 (1971.11-1973)
Phil May:vo
John Povey:key/vo
Skip Alan:ds/vo
Peter Tolson:g
Stuart Brooks:b/vo
 活動停止から約半年でMayはバンド活動を再開する。Wally Wallerに代わって元Leaf HoundのStuart Brooksが加わった以外は活動停止前の面子が揃った。Warner Bros.から2年半ぶりのアルバム「Freeway Madness」を発表。バンドには加わらなかったが、Wallerが本作のプロデュースを担当している。Wallerは活動停止時にSkip Alanが関わったバンドSunshineのアルバム・プロデュースも同じWarnerで担当しており、活動再開とアルバム制作は彼の人脈および尽力によるものか。

#9 (1973-1974.12)
Phil May:vo
John Povey:key/vo
Skip Alan:ds/vo 
Peter Tolson:g
Gordon Edwards:b/key/vo
※Jack Green:vo
 Stuartに代わってSunshine人脈からGordon EdwardsとJack Greenが加入。今度はSwan Songとの契約を獲得する。契約を切られても不思議と手を差しのべるレーベルが出てくるのは、同じミュージシャン仲間らからはリスペクトされるもののなぜか売れない本グループの特徴を表しているかのよう。ポップ感覚あふれる好アルバム「Silk Torpedo」を制作。Greenは本作レコーディングに参加したが、すぐにT.Rexに加入している。

#10 (1974.12-1976.6)
Phil May:vo
John Povey:key/vo
Skip Alan:ds/vo
Peter Tolson:g/vo
Gordon Edwards:key/g/vo
Jack Green:b/vo
 T.Rexを経たJack Greenが再び加わって6人編成に。Swan Songでの第2弾アルバム「Savage Eye」を制作。しかし、1976年半ば、リーダーのMayが脱退を表明し、オリジナル・バンドとしてはこれが最終アルバムとなった。MayとPoveyを除く4人はバンド名をMetropolisに改めて活動を開始するが翌年解散。Mayは自身のグループPhil May & The Fallen Angelsを結成した。

#10 (1978)
Phil May:vo
Dick Taylor:g/vo
Walley Allen:b/vo
Skip Alan:ds
John Povey:key
 人気が高かったオランダ(自国に次いでシングル・リリース数が多い)で1日限定の再結成ギグが実現。Taylorを含む全盛期のメンバーが揃った。

#11 (1980-1981) 
Phil May:vo
Dick Taylor:g/vo
Walley Allen:b/vo
Skip Alan:ds
John Povey:key
Peter Tolson:g/vo
 本格的な再結成が実現。1978年の再編メンバーにPeter Tolsonが加わった6人編成で新アルバム「Cross Talk」を制作した。この後、MayとTaylorのオリジナル・メンバー2人を中心として再び活動を継続する。

#12 (1983?- ) 
Phil May:vo
Dick Taylor:g/vo
Joe Shaw:g (ex-Doll By Doll)
David Wintour:b (session) → Chicken Shack
John Clark:ds
David Wilki:key
Kevin Flanagan:sax
John Elster:harmonica
 ライブ・アルバム「Live At Heartbreak Hotel」をリリース。

#13 (1987)  
Phil May:vo
Dick Taylor:g/vo
Joe Shaw:g
Roelf Ter Velt:b
Bertram Engel:ds
 アルバム「Out Of The Island」をリリース。

(1998) 
Phil May:vo
Dick Taylor:g/vo
John Povey:key/vo
Wally Waller:b/vo
Skip Alan:ds/vo
 傑作コンセプト・アルバム「S.F. Sorrow」をライブで再演した作品「Resurrection」を発表。

(2007)
Phil May:vo
Dick Taylor:g/vo
John Povey:key/vo
Wally Waller:b/vo
Skip Alan:ds/vo
Frank Holland:g